2024年8月号
- 衛星による天文学への干渉に関する研究センターの設立法案がアメリカ上院に提出される
- ロシア・ウクライナ戦争、ロスコスモスに1800億ルーブルの損失をもたらす
- 中国のメガコンステレーション打上げがデブリフィールドを形成
- マンフレッド宇宙法模擬裁判2025年大会の問題文が発表
- アストロスケール、JAXAとデブリ除去契約を締結
- ノルウェーがアンド―ヤ島の宇宙港に打上げライセンスを付与
- アメリカの不動産投資家が宇宙港周辺のインフラ整備に注力
- [コラム@]“From Earth to Uch?: The Evolution of Japan’s Space Security Policy and a Blueprint for Strengthening the U.S.-Japan Space Security Partnership,”
- [コラムA]“The Woomera Manual and Military Space Activities and Operations”
- [コラムB]“Who Owns 3D Printing on the Moon? and Other Space-Patent Conundrums"
- [コラムC]“Supreme Court case could affect orbital debris mitigation rules.
- [お勧めの文献@]Claudia Cinelli(ed.), Regulation of Outer Space: International Space Law and the State (Routledge, 2024).
- [お勧めの文献A]Kimitake Nakamura, Norm Formation in Space Law (Brill, 2024).
- [お勧めの文献B] Gune? Unuvar and Xueji Su, “International Legal Governance of Space Resources and the Role of National Frameworks: The Case of China” Chinese Journal of International Law (2024).
衛星による天文学への干渉に関する研究センターの設立法案がアメリカ上院に提出される
[SPLメモ] 衛星コンステレーション技術の普及による衛星の数の増加は、人工衛星がもたらす光が天文学で用いられる望遠鏡に干渉するのではないかという懸念をもたらしている。光害と呼ばれるこの種の問題は国連においても議論が始まっており、今回の法案はこの流れを汲むものである。
ロシア・ウクライナ戦争、ロスコスモスに1800億ルーブルの損失をもたらす
https://www.spacedaily.com/reports/Russian_space_agency_says_break_with_West_cost_
21_bn_999.html/
[SPLメモ] 国際宇宙ステーションに代表されるように、冷戦後の宇宙開発はロシアを含む世界規模での協力のもと行われている。ロシア・ウクライナ戦争に伴うロシアと西側諸国の関係悪化は当然宇宙開発分野でも発生している。
中国のメガコンステレーション打上げがデブリフィールドを形成
https://spacenews.com/chinese-megaconstellation-launch-creates-field-of-space-debris/
[SPLメモ] スペースデブリは衝突によって他の宇宙物体に大きな被害をもたらし、また、衝突回避のための軌道もまた宇宙活動に負荷をかける。国連とIADC(政府機関間スペースデブリ調整委員会)はそれぞれスペースデブリ低減ガイドラインを作成し、同ガイドラインに基づき各国はデブリ低減に向けて努力している。
マンフレッド宇宙法模擬裁判2025年大会の問題文が発表
[SPLメモ] Manfred Lachs宇宙法模擬裁判大会は学部生・大学院生向けの国際宇宙法の模擬裁判大会である。2024年は私企業の展開するメガコンステレーションに対する監督義務や光害等の問題を扱ったが、2025年の事件名は「Case Concerning the Legality of Space Activities in Conflicts」であり、安全保障分野を中心とした問題となっている。
アストロスケール、JAXAとデブリ除去契約を締結
[SPLメモ] アストロスケール社はRPO(ランデブー・近接オペレーション)によるADR(能動的デブリ除去)を事業の中心に据える日本の企業である。今回の契約に基づくミッションではデブリへの近接やデータ収集だけでなく、捕獲と軌道離脱を行う予定となっている。
ノルウェーがアンド―ヤ島の宇宙港に打上げライセンスを付与
https://spacenews.com/norwegian-spaceport-receives-government-license/
[SPLメモ] アンド―ヤ宇宙港(Andoya Spaceport)は2023年11月に開港した宇宙港で、ノルウェー企業のAndoya Spaceが運営している。同宇宙港はドイツの宇宙企業と提携しており、2024年の6月にはノルウェー・ドイツ政府間で衛星打上げに関する協力宣言が出されている。
アメリカの不動産投資家が宇宙港周辺のインフラ整備に注力
https://spacenews.com/real-estate-investor-moves-to-ease-space-coast-strain/
[SPLメモ] 米国フロリダ州の打上げ射場周辺のテーマパーク化に不動産投資家が乗り出す。宇宙活動をエンターテイメント化する動きは、今後の商業宇宙港ビジネスにとっても朗報かもしれない。
[コラム@]Kari A. Bingen and Makena Young, “From Earth to Uch?: The Evolution of Japan’s Space Security Policy and a Blueprint for Strengthening the U.S.-Japan Space Security Partnership,” CSIS Report, 2024.
[SPLメモ] 2023年6月に内閣府は宇宙安全保障構想を打ち出した。本コラムは当該構想を基に将来の日米間における宇宙安全保障パートナーシップに関するものである。宇宙に限らず安全保障研究において著名なCSISが日本の本構想を分析するという点では、日本国内の実務家にとり必読の資料である。
[コラムA]Dale Stephens and Joanna Jarose, “The Woomera Manual and Military Space Activities and Operations”
https://lieber.westpoint.edu/woomera-manual-military-space-activities-operations/
[SPLメモ] 宇宙空間の軍事利用に関するマニュアルは2つある。MILAMOSマニュアルとWOOMERAマニュアルである。前者は1967年宇宙条約が紛争時の宇宙活動にも適用されるとの立場から、後者は宇宙空間における紛争には1967年宇宙条約ではなく国際人道法が適用されるという立場をとる。
[コラムB]Qixuan Wang, “Who Owns 3D Printing on the Moon? and Other Space-Patent Conundrums"
[SPLメモ] 3Dプリンターを題材に、天体を含む宇宙空間における知的財産に関する法的考察。
[コラムC]Jeff Foust, “Supreme Court case could affect orbital debris mitigation rules.
https://spacenews.com/supreme-court-case-could-affect-orbital-debris-mitigation-rules/
[SPLメモ] 2007年国連宇宙デブリ低減ガイドラインは、法的拘束力のないソフトローと分類される。しかし米国連邦通信委員会(FCC)は長い間をかけてその履行確保に取り組んでいる。本ニュースはデブリ低減に関する米国最高裁の判決とFCCの取組を紹介する。
[お勧めの文献@]Claudia Cinelli(ed.), Regulation of Outer Space: International Space Law and the State (Routledge, 2024).
[SPLメモ] 本書は宇宙空間の持続的利用に主眼を置き、宇宙ビジネスと国内規制の関連性という切口で、宇宙活動国による「責任ある行動」をどう確保すべきかを示すものである。
[お勧めの文献A]Kimitake Nakamura, Norm Formation in Space Law (Brill, 2024).
https://brill.com/display/title/70851
[SPLメモ] 体系化・理論化が難しいとされる国際宇宙法を前に、実務家として宇宙法規範形成の交渉の場に携わってきた著者による名著「宇宙法の形成」(信山社、2023年)の英語版。原書は空法学会のリーゼ賞を2024年に受賞。
[お勧めの文献B] Gune? Unuvar and Xueji Su, “International Legal Governance of Space Resources and the Role of National Frameworks: The Case of China,” Chinese Journal of International Law (2024).
[SPLメモ] 宇宙資源の探査利用に関し、国内法を制定している国は米国、ルクセンブルグ、アラブ首長国連邦、そして日本であるが(2024年時点)、中国のように国内法を制定せずとも宇宙資源活動を積極的に進める宇宙活動国もある。宇宙資源活動に関する国内法の拡散による"ボトムアップ"形式で宇宙資源活動のルールが形成されていくのか?同論文は、中国の視点に基づき、中国国内の宇宙資源法枠組みを評価するものである。