2025年4月号
- マンフレッドラクス国際宇宙法模擬裁判大会アジア太平洋地域ラウンドが開催
- NATO事務総長、ロシアが宇宙空間に核兵器を配置する可能性について指摘
- 中国、赤道直下宇宙港プロジェクトの事前調査につきマレーシアの企業と合意
- 内閣府、国土交通省と共同で「サブオービタル飛行に関する官民協議会(第6回)」を開催
- 大西卓哉宇宙飛行士、国際宇宙ステーションのコマンダーに就任
- 中国宇宙開発担当者、アメリカによる他国の共同宇宙開発計画への干渉を非難
- 国連宇宙部、シンガポールへ宇宙法人材を派遣
- 中国、デバイス直結型衛星サービスに関する規制枠組みを公表
- [コラム@]"Why Switzerland’s proposed space law matters"
- [コラムA]「日本の取り組みが国際的に高く評価される宇宙交通管理(STM)とは?」
- [お勧めの文献@]Jeremy A. Kent, “Space Resource Development and Property - Clarifying Usufruct,” Journal of Air Law and Commerce, Vol. 90, issue 1 (2025), pp. 41-72.
- [お勧めの文献A]Luping Zhang and Ziyi Li, “Will the Second Trump Administration Cooperate With China in the Space Sphere: An Empirical Approach,” Air and Space Law, Vol. 50, Issue 2 (2025), pp. 135-165.
- [お勧めの文献B]Matylda Berus, “European Space Puzzle: Evaluation of the Space-Related Institutional Players in Europe,” Air and Space Law, Vol. 50, Issue 2 (2025), pp. 191-208.
- [お勧めの文献C]International Law Handbook - Collections of Instruments, United Nations, 2017.
マンフレッドラクス国際宇宙法模擬裁判大会アジア太平洋地域ラウンドが開催
https://iisl.space/asia-pacific-manfred-lachs-space-law-moot-court-competition/
[SPLメモ] 2025年4月10日から12日にかけて、マンフレッドラクス国際宇宙法模擬裁判大会のアジア太平洋地域予選がインドのグジャラートで開催された。今年度の優勝校はシンガポール・マネジメント大学で、日本からは書面予選を勝ち抜いた早稲田大学が出場した。
NATO事務総長、ロシアが宇宙空間に核兵器を配置する可能性について指摘
https://www.newsweek.com/russia-may-deploy-nuclear-weapons-space-nato-chief-2058974
[SPLメモ] 2025年4月12日、NATO事務総長のマルク・ルッテはドイツの新聞社の取材に対してロシアが宇宙空間に核兵器を配置する可能性がある旨を指摘した。ロシアも当事国となっている宇宙条約は第4条において宇宙空間の軌道における大量破壊兵器の配置を禁止しており、核兵器はこの「大量破壊兵器」の代表的な例である。ロシアが実際に核兵器を配置した場合、使用の有無にかかわらず、配置することそれ自体が宇宙条約違反となる。
中国、赤道直下宇宙港プロジェクトの事前調査につきマレーシアの企業と合意
https://spacenews.com/china-and-malaysia-to-study-international-equatorial-spaceport-project/
[SPLメモ] 2025年4月15日、中国政府はマレーシアの関連企業との間で、新たな宇宙港計画に向けた事前調査につき合意した。中国は近年、マレーシアとの宇宙開発協力につき積極的な移行を示しており、本宇宙港プロジェクトもその一環と思われる。他方で、マレーシアはインドネシアとの間で競争関係にあり、同宇宙港はロケットのインドネシアの上空通過の問題を抱えていると指摘する声もある。
内閣府、国土交通省と共同で「サブオービタル飛行に関する官民協議会(第6回)」を開催
hhttps://www8.cao.go.jp/space/policy/suborbi/kaisaiannai/2025.html
[SPLメモ] 2025年4月16日、内閣府は国土交通省と共同で「サブオービタル飛行に関する官民協議会(第6回)」を開催した。本会議の主要な議題は「宇宙活動法の改正について報告」「本邦事業者の開発状況等報告」「宇宙港に関する国内外動向報告」となっている。サブオービタル飛行に関する規制枠組については、先月公開された『宇宙活動法の見直しの基本的方向性中間とりまとめ』でも扱われており、今後の法改正に向けた議論が行われている。
関連資料:『宇宙活動法の見直しの基本的方向性中間とりまとめ』
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/31-katsudou_minaosi/k_m-chukan/honbun.pdf
大西卓哉宇宙飛行士、国際宇宙ステーションのコマンダーに就任
https://www.jaxa.jp/press/2025/04/20250421-1_j.html
[SPLメモ] 2025年4月19日、大西卓也宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)のコマンダーに就任した。ISSのコマンダー就任は日本人では3人目となる。ISSの指揮官は「国際宇宙基地搭乗員についての行動規範」に基づきISSの指揮を執ることになる。
中国宇宙開発担当者、アメリカによる他国の共同宇宙開発計画への干渉を非難
[SPLメモ] 2025年4月23日、中国の宇宙開発担当者はロイターの取材に対しアメリカが他国の共同宇宙開発計画に干渉していると非難した。アメリカと中国はそれぞれアルテミス計画、国際月面研究ステーション(ILRS)計画という国際的な月面開発計画を主導しており、関連文書への署名国の募集はある種、協力国を巡る米中の競争の様相を呈している。
関連記事:“Lunar Space Cooperation Initiatives”
https://swfound.org/lunar-space-cooperation-initiatives/
国連宇宙部、シンガポールへ宇宙法人材を派遣
https://unis.unvienna.org/unis/pressrels/2025/unisos603.html
[SPLメモ] 2025年4月29日、国連宇宙部はシンガポールに対する宇宙法人材の能力支援につき合意した。同プロジェクトは国連宇宙部の「Space Law for New Space Actors」プログラムの一環として行われたものであり、昨年5月には日本もフィリピンとタイに支援を行っている。
関連記事:UN Office for Outer Space Affairs and Japan collaborate to support new space law missions to Philippines and Thailand
https://unis.unvienna.org/unis/en/pressrels/2024/unisos595.html
中国、デバイス直結型衛星サービスに関する規制枠組みを公表
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1333234.shtml
[SPLメモ] 2025年4月30日、中国の国家インターネット情報弁公室(CAC)は衛星サービスに直接接続されるデバイスを管理する規制枠組を公表した。CACの担当者によると、同規制枠組は中国国内のこの種のサービスを提供する事業者は政府の許可と承認を得る必要があり、ネットワークセキュリティやデータ保護、違法コンテンツ管理に関する義務を負う。同規制枠組は6月1日に施行される。
[コラム@]Emmanuelle David, Why Switzerland’s proposed space law matters
https://www.swissinfo.ch/eng/science/why-switzerlands-proposed-space-law-matters/89123312
[SPLメモ] 宇宙システムの運用に関するスイスの国内法整備に関するコラム。スイスは宇宙局を持っておらず、また、中立国であるため、EU国でもなければ米国の関税の影響も受けない。しかし宇宙業界における強みは衛星通信にある。スイスの宇宙活動を知るには必読のコラム。
[コラムA]中村友弥「日本の取り組みが国際的に高く評価される宇宙交通管理(STM)とは?技術開発とルールメイキングを”車の両輪”として進める」
[SPLメモ] 日本におけるSTMのルール形成において、民間企業のアストロスケール社が関与する点が興味深い。国際ルールのアクターは国家がメインであるが、ESAが進めるゼロデブリ憲章も民間企業によるボトムアップの形を取っている。
[お勧めの文献@]Jeremy A. Kent, “Space Resource Development and Property - Clarifying Usufruct,” Journal of Air Law and Commerce, Vol. 90, issue 1 (2025), pp. 41-72.
https://scholar.smu.edu/jalc/vol90/iss1/3/
[SPLメモ] 宇宙資源の利用という広い概念を、宇宙資源の獲得フェーズや利用フェーズそれぞれに必要なルールを、宇宙条約における諸原則から検討する文献。民間企業が参画する宇宙資源ビジネスの観点から興味深い論文。
[お勧めの文献A]Luping Zhang and Ziyi Li, “Will the Second Trump Administration Cooperate With China in the Space Sphere: An Empirical Approach,” Air and Space Law, Vol. 50, Issue 2 (2025), pp. 135-165.
https://kluwerlawonline.com/JournalArticle/Air+and+Space+Law/50.2/AILA2025020
[SPLメモ] トランプ政権がアルテミス計画の大幅な修正を提案して以来、日本の宇宙活動への影響も懸念される。本文献は米中の協力関係に着目するもの。
[お勧めの文献B]Matylda Berus, “European Space Puzzle: Evaluation of the Space-Related Institutional Players in Europe,” Air and Space Law, Vol. 50, Issue 2 (2025), pp. 191-208.
https://kluwerlawonline.com/journalarticle/Air+and+Space+Law/50.2%20[pre-publication]/AILA2025013
[SPLメモ] 欧州レベルで初の宇宙法の策定が進んでいる。日本からは分かりづらいが、ESAの宇宙プログラムのほか、EUレベルの宇宙プログラムがあり、ESA加盟国とEU加盟国にも違いがある。その理解を深めるには本論文はお勧め。
[お勧めの文献C]International Law Handbook - Collections of Instruments, United Nations, 2017.
BOOK 1, BOOK 2, BOOK 3, BOOK 4
[SPLメモ] UN Audiovisual Libraryで見つけたe-Bookです。本サイトの〔Moot - Resources〕でも紹介しています。国連がお勧めする国際法の教科書です。